新千年生活と意識に関する調査

日本・韓国・アメリカ・フランス国際比較

 

                  日本青少年研究所

 

 

 


T 調査概要

 

 

1 調査の目的と内容

 本調査は新世紀を迎えるにあたり、青少年が自分自身と家庭、学校、社会の現状をどのように認識しているか特に現状に満足か不満足かをたずねている。そのうえで、不満や問題はなにかを把握しようとした。

 これらの現実に立って、青少年の新千年をどのような目的で生きようとするのか。どのような職業を求めるのか。そして、人生最大の目標は何かをみようとする。また、文化的環境の実体をも把握しようとしており、なかでも、コンピューターにどの程度かかわっているのか。外国との交流の実態や、社会的差別についても明らかにしようとしている。

 これらの事実とは別に20世紀最後での青少年の価値観を探ることをも目的とした。その内容は、「結婚」「家族・家庭」「国・法律」「インタネット」「発展途上国」「未来予測」などを柱とした。

 この調査が、新世紀を生きていくうえでの教育や指導に役立つことを期待する。

 

2 調査方法

 本調査は日本、韓国、アメリカ、フランスのそれぞれ一都市を選んで行なわれた。質問は学校をとおして行い、質問内容は、4ヶ国殆んど同じである。調査の実施、調査対象などは次のとおりである。

 

日本

韓国

アメリカ

フランス

実施時期

2000年7月

2000年7月

2000年7月

2000年7月

地 域

東 京

ソウル

ニューヨーク

パ リ

対 象

中2と高2

日本と同じ

日本と同じ

日本と同じ

調査方法

学校における集団質問紙法

日本と同じ

日本と同じ

日本と同じ

有効回答数

884票

1021票

871票

923票

 

3 調査対象者の基本属性

性別:

 

 

 

 

 

日本

韓国

アメリカ

フランス

1.男

45.4

50.0

41.1

52.4

2.女

54.3

50.0

57.2

47.2

    NA

0.3

0.0

1.7

0.3

実数(人)

884

1021

871

923

 

 

 

 

 

年令:

 

 

 

 

 

日本

韓国

アメリカ

フランス

1.13歳

32.5

19.4

13.7

14.0

2.14歳

8.8

26.9

32.6

11.6

3.15歳

0.2

4.2

17.3

13.5

4.16歳

44.3

21.0

16.1

24.2

5.17歳

14.0

25.5

9.0

16.5

6.18歳

0.1

2.5

10.4

18.0

    NA

0.0

0.5

0.9

2.3

 日本を除く、韓国、アメリカ、フランスでは、あなたの家は裕福かそうでないかを質問している。日本ではこの質問を「あなたのお小遣いは、好きなだけ貰えますか」と変えた。従って、韓国、アメリカ、フランスの回答は、日本と異なっている。この結果は次のようになった。

 日本では「もらえる」6.4%、「まあまあ」54.2%、「きびしい」37.2%であった。

 韓国、アメリカ、フランスは次のとおりである。

 

韓国

アメリカ

フランス

裕福

10.2

16.5

29.3

まあまあ

82.4

70.8

42.5

貧しい

 6.4

 8.0

19.8

NA

 1.1

 4.6

 8.5

 

 韓国とアメリカでは、中間層が極めて多いが、フランスでは、裕福層と貧困層が比較的多く、中間層は5割に満たなかった。

 同居者は誰かをたずねている。この結果は国によってかなりの違いがあった(表1)

 日本は「実の父母」が81.9%、次いで「父か母かどちらか一人」の10.6%だったが、韓国では「実の父母」が94.3%と多かった。これに反して、フランスでは実の父母との同居が49.5%で半数を割り、「継父または継母」とは12.9%、「父か母のどちらか」は16.9%と多かった。アメリカもフランスに近く、「実の父母」が61.4%、「養父または養母」が12.4%となった。誰との同居かの事実は、子どもの行動や考え方に影響しているかどうかは、注意深くみる必要があるだろう。

表1 同居者

 

 

 

 

 

 

 

日本

韓国

アメリカ

フランス

1.実の父母

 

81.9

94.3

 61.4

49.5

2.養父または養母

 0.3

 0.3

 12.4

 8.2

3.継父または継母

 0.7

 0.5

  8.0

12.9

4.父か母かどちらか一人

10.6

 1.6

  7.3

16.9

5.親戚

 

 0.8

 0.7

  4.6

 6.0

6.ひとり暮らし

 

 0.2

 0.1

  3.4

 3.0

7.その他

 

 5.0

 0.7

  1.8

 0.7

NA

 

 0.5

 1.9

  0.9

 2.8

 

 

4 調査結果の要約

 

1) 調査の実施について

 本調査は4ヶ国の都市の中高生を対象として行われた。調査の企画は韓国青少年研究所が行い、各国との連絡をはじめ、調査票の原案も作成した。質問の変更は原則として、各国で支障のあるもののみが可能で、その他の変更はしないことに協定された。

 質問は以上の理由で、必ずしも日本が関心を持つことだけで作成されたわけではない。中には日本では関心の低い質問もある。しかし、全体としては、各国共通の問題が取り上げられている。

 調査対象地域は各国の都市とされた。日本は東京、韓国はソウル、アメリカはニューヨーク、フランスはパリに所在する中、高校生である。

 各国の調査票は韓国に集められ集計された。各国のデータはフロッピーに収集され、調査に参加した4ヶ国分全部が、各国に送られ、各国が自由に分析した。

 

2) 調査結果概観

 属性では、同居する家族で大きな違いがあった。日本と韓国では、実父母との同居が8割から9割だった。アメリカでは6割、フランスでは実に49.5%で半数を切っている。この事実が他の質問に陰を落としているようにみられる。

 自分を含めて各生活領域の満足度をたずねている。アメリカ、フランスは、自分、家庭、学校、社会、友人の各領域で高い満足度を示す。日本と韓国では高い不満を示す。日本でも「友達関係」だけがやや高い満足を示している。

 学校生活はアメリカ、フランスでは「勉強」を重要視し、日本と韓国は「友達関係」を重視する。深刻な問題として、「いじめ」が日韓両国で挙げられた。

 職業や将来の目的では、日本は特異なものを示した。アメリカ、フランスなどの「医師」「法曹人」に反して、「公務員」「会社員」が多かった。人生目標でも、アメリカは「社会的地位や名誉」(4割)だったが、日本では1.8%で、「人生を楽しんで生きること」が、日本6割、アメリカ4%だった。

 地域での文化施設の有無では、アメリカ、フランスでは「非常によくできている」がそれぞれ5割と7割で多く、日本韓国は3%前後に過ぎなかった。それだけ、日本の音楽演劇との接触が少ない傾向がある。

 コンピューターの使用では、韓国が圧倒的に多い。4ヶ国ともゲーム・娯楽に使用している。外国語の理解能力では、韓国の中高生が高い能力を示す。

 人種差別、性差別などさまざまな差別についてたずねた質問では、アメリカの保障が強く認められている結果となったが、中高生には各国の相対的評価の能力が必ずしも十分ではないようだ。

 純潔主義は認められるかなど、価値観について15項目に亘って質問した結果は、興味あるものとなっている。「純潔は守るべき」「必ず結婚すべき」「女性は職業を持っても家事の責任を負うべき」「家族の幸福は国の発展より重要」「年取った親の面倒を見る」「国のために何か貢献したい」など殆んどの項目で、アメリカの肯定、フランスの否定が対立した。興味あることに、日本はフランスと多くの項目で同じ結果だった。しかし、「家族の幸福は国の発展より重要」「自分の選択した結果は自分の責任」では、日本がフランスより多い肯定となった。また、日本の結果は韓国の結果と多くの項目で似た結果ともなっている。

 21世紀はどのようなものかの質問に対して、日本の中高生は悲観的である。この点、アメリカでは明るい未来を描くのと好対照となった。

 

参照:報告書の目次

目  次

 

T 調査概要

1 調査の目的と内容………………………………………1

2 調査方法…………………………………………………1

3 調査対象者の基本属性…………………………………2

4 調査結果の要約…………………………………………4

 

U 調査結果各論

1 満足・不満足……………………………………………7

2 経済的独立の時期………………………………………13

3 学校生活…………………………………………………15

4 将来の職業………………………………………………17

5 人生目標…………………………………………………24

6 文化参加とコンピュータ学習…………………………26

7 外国語と国際交流………………………………………34

8 権利の保障………………………………………………40

9 青少年活動、参加団体…………………………………44

10 価値観……………………………………………………46

11 21世紀の予測…………………………………………50

 

附1 価値観の因子分析とクラスター別の

クロス集計結果………………………………………56

附2 単純集計結果…………………………………………67

 

 


 

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