四 学校時代の自己像と働く意識


1 学校時代の自己像

 最後の学校時代をどのように生活したかと尋ねてみた。図41はその結果である。「張り切って集中したことがあった」「よく遊んだ」「好きな異性と付き合った」「明るい人間だった」など、楽しい学校生活を送った者のほうが多いようである。


2 学校時代の自己像と仕事観

 学校時代の自己像と新入社員たちのいまの仕事観はどのような関連性をもっているかを見てみる。
 まず、学校時代の自己像について、因子分析をしてみた。表4−1はその結果を示すものである。
20項目が6つの因子に分けられた。この因子分析の結果に
基づいて、さらにクラスター分析を行い、その結果、新入社員たちを4つのグループに分けた。

 この4グループをそれぞれA群、B群、C群、D群と名づけ、表41に示しているように、A群は全体的に暗い学校生活だった。B群は明るく、人気者で、よく勉強し、まじめで、皆から信頼されて学校生活を送った。C群はよく遊んで、よく学校をさぼったが、部活に積極的だった。D群はいい先生にめぐり合い、得意の学科があったが、部活やスポーツに関心が低く、友達との付き合いも親友に限る傾向があり、内向的な「ガリ勉」のイメージが強い。

 この4タイプはそれぞれどのような仕事観をもっているかを見てみる。

A群:全体の27.0%を占め、男女の比率はそれぞれ55.5%と43.8%。人とやりとりする仕事が苦手で、自分で考えたりするより、決まった仕事をするのが好き、同じ会社での勤続意識が弱く、人間関係にも自信がない。学校時代と同じく、仕事に対しても積極的ではないのである。

 B群:全体の23.6%を占め、男女の比率はそれぞれ54.9%と44.7%となっている。人とやりとりの仕事や考える仕事が好き、会社への忠誠心が強く、リーダーシップで、仕事の面でも人間関係の面でも評価される自信をもち、カラオケが好き、おしゃれで、異性にもてるという積極的な明るい人間像である。

 C群:全体の25.0%、男女の比率は71.4%と27.5%で、男子が圧倒的に多い。決まった仕事や机の上の仕事をするのが苦手で、会社外の余暇生活を楽しもうとするタイプである。

 D群:全体の24.4%、男女の比率は56.1%と42.4%。机の上の仕事をするのが好きで、転職意識が薄い。ファッションや流行、社会の出来事に関心が低く、異性にもてないが、マンガが大好き。なんとなくマンガ「オタク」のイメージがある。

 以上のように、学校時代の生活意識はそのまま彼らの仕事観に影響を与えていることがわかる。


表4−1 学校時代の自己像の因子分析

 

 

因子負荷量

クラスター(%)

A群

B群

C群

D群

第一因子

6.異性にもてた

.765

20.3

56.9

19.3

5.7

15.クラスの人気者だった

.668

22.1

69.6

30.1

20.2

20.流行に乗るようにした

.587

48.6

69.6

39.4

22.1

13.友だちから信頼されていた

.515

82.4

98.8

82.5

87.4

11.明るい人間だった

.505

77.2

98.8

89.2

88.5

12.よく冗談を言う人間だった

.456

62.8

92.5

81.0

81.7

7.好きな異性とつきあった

.441

55.5

83.0

84.4

54.6

固有値:2.778 寄与率:13.9%

第二因子

3.勉強が良くできた

-.686

31.0

64.8

11.9

43.9

9.まじめなほうだった

-.681

57.6

81.8

48.0

60.7

14.学校をよくさぼった

.664

31.7

28.9

57.2

34.7

5.よく遊んだ

.433

75.2

92.9

94.1

76.7

固有値:2.032 寄与率:10.2%

第三因子

18.張り切って集中したことがあった

.728

60.3

96.4

95.9

96.9

16.得意の学科があった

.566

49.7

91.3

59.1

82.4

10.いい先生にめぐりあった

.538

56.6

85.0

64.3

87.4

固有値:1.849 寄与率:9.2%

第四因子

2.親友だけと付き合った

-.765

32.1

28.5

32.0

44.3

1.誰れとも付き合いが良かった

.679

73.8

95.3

78.1

61.8

固有値:1.623 寄与率:8.1%

第五因子

17.嫌なことが多かった

.818

35.9

23.3

14.5

22.9

19.よく落ち込んだ

.784

40.0

41.5

37.2

40.8

固有値:1.438 寄与率:7.2%

第六因子

8.部活に積極的だった

.819

20.0

63.2

75.8

18.3

4.スポーツが得意だった

.619

45.2

83.4

77.0

19.8

固有値:1.372 寄与率:6.9%






























表4−2 タイプ別仕事観

 

A群

B群

C群

D群

1. 人とやりとりする仕事が好きなほう

75.9

92.9

87.7

80.2

2. きまった仕事をするのが好きなほう

72.8

66.8

59.1

63.7

3.考えたり、新しい仕事をすることが好きなほう

65.5

83.8

82.9

74.0

4.机のうえの仕事が好きなほう

39.3

35.6

29.7

40.1

5.上からいわれなくても自分で考えて仕事をするタイプ

59.0

75.1

70.6

69.8

6.仕事に生き甲斐をもつほう

60.7

77.1

66.9

  71.0

7. 会社の外でも、会社の人と一緒にいたいほう

37.2

51.0

43.1

46.6

8. 会社のために自分の生活が犠牲になってもよいと思う

12.8

18.6

13.8

15.3

9. たくさん働けばたくさん見返りがくると思う

  65.5

72.3

63.2

65.3

10. この会社に一生いたいと思う

38.6

51.4

44.6

50.2

11. 個人生活を少し犠牲にしても昇進したい

40.3

47.8

42.8

44.7

12. 会社がひけたら元気になるほう

53.8

56.9

58.0

54.2

13. 人の上にたつのが好きなほう

40.0

68.8

52.8

48.9

14. 上司や同僚の意見をよく聞くほう

93.1

94.9

91.4

88.9

15. 会社のルールや上司が間違っていると思えば自分の意見をいうほう

46.2

68.4

63.6

58.0

16. 有給休暇を十分とりたいと思う

82.8

82.6

88.1

81.3

17. 柔軟な考えをするほう

58.6

77.1

66.2

66.0

18. 流行や社会の出来事に敏感なほう

61.0

79.1

60.6

54.6

19 自慢できるような特技とか趣味をもっている

42.1

77.1

61.0

50.8

20  仕事の面で評価される自信がある

45.5

71.9

56.5

49.2

21 人間関係の面で評価される自信がある

56.9

88.1

69.1

59.9

 

























 4−3 タイプ別の生活意識

 

A群

B群

C群

D群

1.あなたは出世をとるか、家庭をとるかといわれたら、家庭をとるほうですか

84.5

87.4

85.1

80.2

2. 恋人の誕生日に有給休暇をとって旅行することに賛成だ

68.3

71.9

71.0

61.5

3. 結婚したら両親と一緒に住んでもよい

39.7

50.2

47.6

 47.3

4. 個人的な話(恋人や家の中の問題など)をする友人がいる

88.3

96.4

93.7

93.5

5.学校以外の友だちが多いほうですか

51.4

  76.3

62.5

58.0

6. カラオケが好きですか

62.1

82.4

64.3

66.0

7. おしゃれなほうですか

50.3

79.1

47.2

37.0

8. 異性にもてるほうですか

20.7

48.6

22.3

6.1

9. 清潔好きのほうですか

82.1

87.4

76.6

74.8

10. ファッション関係の雑誌をみるほうですか

50.7

67.2

52.0

42.7

11. マンガが好きなほうですか

73.8

78.3

75.5

81.7

12. 仕事に関係ある本を読みたいですか

70.0

83.4

78.4

81.7

13. 新聞の国際面に目を通しますか

  35.2

50.2

43.1

45.4

14. 円の対ドルレートに関心のあるほうですか

22.1

35.2

30.9

32.1

15. 選挙には投票するほうですか

43.4

51.4

48.0

57.3


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